結論から申し上げますと、「技術的には可能ですが、いくつかの重要な注意点(リスク)がある」というのが実務上の回答になります。
押出し材を扱う現場ではよく検討されるケースですが、A6063とA6005Cでは材料の「硬さ」と「流れ方」が異なるため、以下の4つのポイントを確認する必要があります。
- 圧力不足と金型への負荷
A6005CはA6063よりも変形抵抗(硬さ)が高いため、同じ形状を押し出すにもより強い圧力が必要です。
リスク: A6063用に設計された(強度計算された)金型に強い圧力をかけると、金型が歪んだり、最悪の場合は割れたりする可能性があります。
特に薄肉の部分や、複雑な中空形状の「マンドレル(芯)」部分に負荷がかかります。
- 寸法精度の変化(収縮率の違い)
アルミは熱い状態で押し出され、冷める過程で収縮します。
リスク: A6063とA6005Cでは収縮率がわずかに異なります。また、材料が硬い分、金型から出た後の「よじれ」の影響も変わるため、ストレッチ矯正による誤差も発生し厳密な寸法公差(±0.1mm単位など)を求める場合、A6063用の金型では寸法が外れることがあります。
- メタルフロー(流れ)のバランス
金型には、アルミが均一に流れるように「ベアリング」と呼ばれる調整が施されています。
リスク: A6063は「サラサラ」と流れるのに対し、A6005Cは「粘り気のある硬さ」があります。A6063用に最適化された流れの設計だと、A6005Cを通した時に流速のムラができ、形材がねじれたり、表面にムラ(肌荒れ)が出たりすることがあります。
- 金型の摩耗(寿命)
A6005CはA6063に比べてマグネシウムやシリコンの含有量が多く、金型への摩耗負荷が高いです。
リスク: 6063用の金型を転用すると、金型の寿命が通常よりも早く尽きてしまう可能性があります。
実務的な判断基準
メーカー側は、無用なトラブルを避けるため基本的に嫌がります。
但し「とりあえず形になれば良い」試作レベルの場合なら、条件によって交渉の余地はあると思っております。
慎重な姿勢は変わりませんが「寸法や表面肌が6063時と変わる可能性がある」という条件付きで受けて頂いた実績はあります。
「量産」や「高精度」が求められる場合100%推奨しません。
A6005Cの特性に合わせた「逃げ」や「ベアリング」の調整を施した専用金型を製作したほうが、結果的に歩留まり(良品率)が上がり、コストも抑えられます。
最後に、ココだけの話ですが・・・
経験上、設計のA6063Sでは強度が足りないのではないかと危惧し、技術担当者へ提案しA6005Cで金型を製作して両方生産し納品たことがあります。
試験の結果、A6063では荷重で開口部の寸法が製品中央で設計値よりも微妙に大きくなってしまうのに対し、A6005Cでは設計値内でした。
結果的には微量なタワミ量を減らすことで、可動性能が格段に向上することが判明しA6005Cをご選択いただきとても喜ばれました。
いまでも定期的にご発注頂いている、思い入れのある開発製品のお話です。
結論から申し上げますと、「6N01」と「6005C」は、「旧名と新名」になります。
かつて日本独自の規格だったものが、国際規格に合わせて整理されたという経緯があります。
※最下部に変更の経緯を記載します。
設計や調達の観点で、これらをどう使い分けるべきか、具体的に比較・解説します。
1. 6N01 と 6005C の違い
- 6N01 (旧JIS規格): 日本で独自に開発された合金で、主に6063より強度の必要な建築材や新幹線や鉄道車両の構造材として進化しました。
- 6005 / 6005C: 国際標準(ISO)に合わせるため、JIS規格が改正された際に、6N01の特性を引き継ぎつつ統合された名称です。
新規で図面を作成するなら、 「A6005C」をご指定下さい。
2. 性能比較表(T5処理の場合)
強度の面では、6005Cの方がわずかに高い基準値を設定されていますが、実用上の差はほとんどありません。
| 特性 | 6N01-T5 (旧規格) | A6005C-T5 (現行規格) | A6063-T5 (比較用) |
| 引張強さ | 245 N/mm² 以上 | 245 N/mm² 以上 | 155 N/mm² 以上 |
| 耐力 (変形しにくさ) | 205 N/mm² 以上 | 215 N/mm² 以上 | 110 N/mm² 以上 |
| 伸び | 8% 以上 | 8% 以上 | 8% 以上 |
| 特徴 | 溶接後の強度低下が少ない | 6N01を継承・強化 | 形は作りやすいが弱い |
3. 改定確認のポイント
① なぜ「6N01」という名前がまだ使われるのか?
古くからある図面や、鉄道・建築関係のベテラン設計者の間では「6N01」という名称が強く浸透しています。
弊社では上記に記載の強度的な資料をご提示し、品質向上になる旨をご説明します。
強くなれば全てOKではないので、技術担当者様にもご確認いただきながら慎重に確認作業をお願いしております。
② 6005「無印」と「C」の違い
実はここが重要です。
- 6005: 海外で一般的な規格。
- 6005C: 日本独自の「C(CopyまたはCommercialの意)」が付いた規格。
海外メーカーに「6005」で発注すると、微妙に組成が異なり、日本のJIS規格(6N01相当)で期待される「薄肉で複雑な形状」がうまく出ないリスクがあります。
国内での調達ならA6005C(またはCS)を指定するのが正解です。
4. 調達担当者様へ
「旧図面の『6N01』をどう調達すべきかお悩みではありませんか?」
以前の図面によく見られる「6N01」は、現在JIS規格では「A6005C」に統合されています。
当社では、旧規格の特性を熟知した上で、現行のA6005C-T5を用いた最適な形材選定をサポートします。
- 強度不足を解消したい: A6063からのグレードアップ提案。
- 形状を複雑にしたい: A6061では不可能な薄肉中空設計。
規格の名称変更に伴う混乱も含め、MSPは技術商社として「今、手に入る最適な材料」を解説・提供いたします。
参考までに、この変更がどの様な経緯で行われたかをまとめると、以下のようになります。
| 年代 | 改定内容と背景 |
| 1999年 | 国際規格(ISO)への整合化開始 日本の独自規格から、4桁の国際規格(A6063など)への移行が本格化しました。 |
| 2006年 | 【重要】6005Cの導入 「6N01」のような日本独自名称を廃止し、国際的な「6005」に日本独自の特性(Commercial/Copy)を意味する「C」を付けた「6005C」が正式に採用されました。 |
| 2015年 | さらなる規格の細分化と統合 化学成分や機械的性質のさらなる微調整が行われ、現在の「A6005C」としての地位が定着しました。 |